不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ベルカ、吠えないのか?/古川日出男

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

 半世紀にわたる、犬の物語。当然どんどん代替わりしてゆくわけだが、彼らの血統としての数奇な運命が、古川日出男独特の文章で描かれる様は、なかなか面白い読書体験となる。日本ヤクザの太った娘が活躍する《現代》パートも、非常に味がある。相変わらず波乱万丈なのに構成感等はそれほどなく、幻視くさい夢見心地の、それでいてどこか熱狂を孕む文章が作品の魅力を決定付けている。非常に独特な作家だと思う。
 正直なところ、好みのタイプの作家ではないが、本編はあまり長くないこともあって、小説好きには大いに推奨できる内容となっている。