不壊の槍は折られましたが、何か?

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砂楼に登りし者たち/獅子宮敏彦

砂楼に登りし者たち (ミステリ・フロンティア)

砂楼に登りし者たち (ミステリ・フロンティア)

 戦国の世を描く連作短編集。全四篇あり、いずれの短編にも《消失》ネタが登場し、ミステリとしてはいかがなものかというトリックでありながら、いやだからこそ、それらの真相は、この本を通底する戦国武将の空しさ・もの悲しさと、見事に響き合う。諸行無常がそくそくと立ち上がる様は、私だけかもしれないが結構感ずるもの大であった。
 というわけで、広くはお薦めできないが、私はこの本を好きになった。そんな感じ。