不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

天狗/大坪砂男

天狗 (探偵クラブ)

天狗 (探偵クラブ)

 表題作は神。ネタ・文章・構造その他、小説の全ての構成要素が主人公の狂気溢れる精神を120%描出する。これを読まずしてバカミス・ファンを名乗るなかれ。バカミス・ファン以外でも、ここまでやられると平伏するしかあるまい。超傑作。予備知識ゼロで読めた幸運も神に感謝。
 その他の短編は、極端に硬いがその分味のある文章、非常にしばしば極端に機械的なトリック、盛られる情緒・哀愁が相乗効果を生む、独特な質感を持つ小説が並べられている。読者を選ぶだろうなという気はするが、いずれも魅力的ではあり、読み終えるのに時間はかかるかもしれないがお薦めである。書店からなくならないうちに。