不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

男の首/ジョルジュ・シムノン

男の首 黄色い犬 (創元推理文庫 139-1)

男の首 黄色い犬 (創元推理文庫 139-1)

 初読。お前は今まで何をやっていたのかと(ry さすがにシムノン初体験ではないんですがね。

 真犯人を燻り出すべく、メグレによってわざと逃がされた死刑囚がパリをあてどなく彷徨い、捜査陣が彼を追う様が、浮世の倦怠感をいい感じで醸し出す。タイトル通り、メグレという《男》が《首》をかけて真相に迫る気概も強く(しかし渋く)感じられる。ミステリ的な欲求にも十分応えてくれる(まあフーダニット面では弱いが)し、余剰を排した長さも適切。たいへん充実した読書であった。