不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

黄色い犬/ジョルジュ・シムノン

男の首 黄色い犬 (創元推理文庫 139-1)

男の首 黄色い犬 (創元推理文庫 139-1)

 田舎町で奇妙な事件が立て続けに起き、住民を恐怖に陥れる。近くにたまたま来ていたメグレがこれに挑む作品である。小粒な謎がテンポよく(しかし押し付けがましくなく、淡々と)提示されるのが小気味良い。そして不気味な雰囲気を帯びつつ、しかしどこか哀愁を漂わせる黄色い犬の存在感も秀逸。物語全編も、構成・情感両面において素晴らしい。執念の渋い捜査を続けるメグレも、印象深い。
 というわけで、これまた非常に充実した読書体験であった。もっと読もうかなこの作家。……まあ来月はそんなに時間ないんだけど。