れんげ野原のまんなかで/森谷明子
- 作者: 森谷明子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 単行本
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本格ミステリとしては、変な真相も、変な論理も、変な伏線も特に見当たらず、日常系のノリのまま終始淡々と進む。長所も短所もない感じで、それほど高くは評価できない。ただし小説としてだと話は違ってくる。文章に味があって、これがなかなか捨て難い。正直この文章には余分なものが多いが、その分情感は出ており、物語にうまく肉付けしている。思うに、《心温まる》系の話は、案外味付けが薄いことが多く、ストーリー面での道草も少ないので《核心》以外の事柄に触れることができないうらみがあり、結果として読後感が腹八分目未満ということがままある。『れんげ野原のまんなかで』はそこら辺を過不足なく満たしてくれる……と私には感じられた。
まあ単に整理整頓度が弱いだけかもしれず、洗練された文章が好きな人にはキツイ小説かもしれませんね。デビュー作が源氏物語ネタだったことに何となく納得。そんな感じ。