不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

悪徳警官はくたばらない/デイヴィッド・ローゼンフェルト

悪徳警官はくたばらない (文春文庫)

悪徳警官はくたばらない (文春文庫)

 『弁護士は奇策で勝負する』に続く、シリーズ第二弾。ミステリとか法廷小説云々の手続きを厳密に踏むわけではなく、時にはそれらの作法を無視さえした上で、娯楽小説としての良質を目指す。それがローゼンフェルトのやり方であり、結果は現在のところ成功気味である。『悪徳警官はくたばらない』は、精彩を放つキャラ作り、起伏に富むストーリー展開、主人公の滑稽多弁(=地の文として機能する)と、三拍子揃った佳品。ついでに訳もうまい。
 というわけで、基本的にはお薦めである。
 ただし、二作連続で身内カードを切ったのは気に食わない。一人称の主人公だから、話に移入するには彼自身を事件の利害関係人とするのが一番なのはわかる。わかるがこれはシリーズであり、現段階で終着点を見据えている様子は皆無である以上、永続的な発展を視野に入れねばなるまい。だからこそ第一作から連続して身内話、というのは不味い。自分に関係のないことでも親身になれる人間を描く能力が作者にないだけなのでは、という疑惑も容易に浮かんでしまうし。
 ついでに第二作の時点で既に解説がネタに走っているのは不愉快である。数作早かろう。