不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ベルリン・シュターツカペレ

  1. ベートーヴェンピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.19
  2. マーラー交響曲第7番ホ短調

 ベートーヴェンのピアノ協奏曲中もっとも「かわいい」曲を、スケール豊かに表現しいていたのは、守旧派たるバレンボイムの面目躍如たるところだ。好みドンピシャではないが、説得力が強いのでOK。
 後半のマーラーは、この曲においてよく為される《雑多な要素全てを一々描き分けたり強調したりする》手法ではなく、それらを右顧左眄と切り捨てて、全体のバランスをよく考えた上で、聴かせどころは何箇所か用意しておき、後は骨太のタッチで一気に聴かせるというもの。普通のロマン派音楽と何ら変わらないその佇まいは、支離滅裂になりがちなこの曲が、そうは言っても既に《古典》となったことを痛感させた。昨日同様の素晴らしいオケの音色にも助けられ、またバレンボイムのテンションも昨日より間違いなく高く、大変素晴らしい演奏であったと思う。ペットやホルン等にミスも散見されたが、んなこたどうでもいい! と言えるレベルを一貫して保ち続けたのも嬉しい。終演後聴衆も大喝采。第二楽章と第四楽章の美しい響き、当分の間忘れられません。
 プログラム冊子のインタビューで語るところによると、バレンボイムは、コードに色彩を見、その対照によって音楽を解し創造する人種(メシアンとかクーベリック)ではなく、特定のコードに縛られない和声を理解しているということだ。そのことが或いは、全編どぎついコントラストの連続と言えるマーラー交響曲第7番を、かくも流麗な普通の曲として演奏することのできる鍵かもしれない。バレンボイム、この分だと同じ作曲家の《第6》とかも良さそうだなあ。次回来日で是非。というか、次回はこのオケで《トリスタンとイゾルデ》《モーゼとアロン》が予定されているわけで、今から涎が出そうです。頼むから休日にやってくれよ。