不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

QED鬼の城伝説/高田崇史

QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)

QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)

 題名から内容が察せられるわけだが、実際その通りで、節分に豆を撒いて鬼は外とやるのはおかしい、という趣旨の主張が繰り返される。いくら何でもさすがにもう飽きた。
 「神は勝者の理論で都合よく騙られたものでしかなく、敗者というだけで悪者にされた人々は、本来尊敬すべきなのに忌み嫌われてる。何かおかしくはないですか皆さん」的な視点は、確かに時には必要である。しかしそれを言いたいがため、しかもそれが間違っていると、正義はこちらにあると思わせたいがため、都合の良い人物を練り上げるのはいかがなものか。理屈抜きに悪は悪だと強く信じている人間ばかり。
 そして、その思い込みが強いはずの人々が、理路整然と話すタタルの言葉に打たれて黙り込んでしまう。「理論で説得されてしまう程度の思い込みで、よくもまああんな事件を起きたものですねえ。感心しますよ、マジで」と皮肉の一つも言いたくなる。これに比べれば、学説上等の、もっともな反論を全く書いていなさそうな雰囲気など些末な瑕疵だろう。
 トリックとかも正直、微妙。今回は外れだろう。作品世界が安定しているのだけは評価できるかも。マンネリとも言うが。