アルゲリッチ&フレンズ
- ハイドン:ピアノ三重奏曲第25(39)番 Hob.XV-25
- シューマン:ピアノ四重奏曲
- メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番
- (アンコール)ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲第3番より第一楽章
- (アンコール)同上より第三楽章
- マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
- 堀米ゆず子(ヴァイオリン)
- リダ・チェン(ヴィオラ)
- 山崎伸子(チェロ)
本当であれば、1月17日に、ルノー(ヴァイオリン)&ゴーティエ(チェロ)・カプソン兄弟との四人で催されるはずの演奏会だったのだが、アルゲリッチが風邪で来日日程を繰り下げた結果、キャンセルとなった。本日はその代替公演であり、ご覧のようにヴァイオリンとチェロが交代している。カプソン兄弟のスケジュール調整がつかなかった模様だ。
演奏はとても素晴らしかった。プログラムも絶妙で、曲順に徐々にピアノが目立って来る配列であり、アルゲリッチの凄さが客席に浸透してゆく様がお見事で、それはアンコールで極点に達したのである。タッチの粒立ちの美しさと煌きはもはや異常。ピアノってこんな音出せたっけという瞬間が多発、あれよあれよという間にコンサートは終了してしまったのである。ヴァイオリン属はもはやただの伴奏と化していた。本日会場に現出したのは、ハイドンやシューマンやメンデルスゾーンやベートーヴェンではなかったかも知れない。アルゲリッチは、楽曲の構成等には目もくれず、その時にどのような音が鳴るかという瞬間芸に注力していた。結果、そこに立ち現れるのはマルタ・アルゲリッチその人である。しかし私は断言しなければならない。それは本当に素晴らしい音楽だったのである。録音じゃこれは入らんわな。
というわけで、やはり彼女は間違いなく、「世界最高」の一人であった。
最終的にピアノが目立ち倒した演奏会だったが、とはいえ他の奏者が駄目だったかというと、駄目だったのはアルゲリッチの長女にして滅多に公開の場では演奏しないというリダ・チェン*1のみ。堀米と山崎は素晴らしかった。特に前者は、個人的に太古の昔『三毛猫ホームズの音楽ノート』で赤川次郎との対談を読んでからずっと名を覚えており、評判もなかなかいいのでいずれ聴こうと思っていたのだが、最高の形で遭遇できたことを幸福に思う。ハイドンの主役は間違いなく、このヴァイオリンだった。アルゲリッチも堀米に対しては至極ご満悦の体であったが、これは舞台上の素振りを見ての勝手な妄想であり、参考意見には決してしてはならない。
*1:技術的に大きな破綻こそないが、自信なさそうな音は聴いていてガックリ来た。ヴァイオリンとチェロが立派なだけに余計に目立つ。できれば今後は、自宅にて、家族や友人だけでアンサンブルを楽しむ時のみ使ってください。