不壊の槍は折られましたが、何か?

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蟲/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)

 作者が述べているような狙いはわかるが、成功しているとは思えない(この点は本人も自覚している)。いや十分気持ち悪いのだが、もっと盛り上げられたはずで、残念な一編だと思う。とはいえ、友人および懸想した女に馬鹿にされ、愛憎がぐちゃぐちゃになる精神模様は切迫感があって素晴らしい。心なしかテンションも高い。乱歩の一面をまざまざと見せ付ける作品であることは確かで、一読に値するだろう。