不壊の槍は折られましたが、何か?

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押絵と旅する男/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男 (光文社文庫)

 傑作だと思う。夕映えの中、汽車に乗り合わせた男に見せられ、語られる、一枚の押絵とその来歴。乱歩がここで描き出す《雰囲気》は実に素晴らしく、浅草十二階とか遠眼鏡等の、何でもないものを不気味に扱う滑稽さも特に気にならないのだった。
 乱歩は幻想味の強い作品の方が、出来が良い。これが、全集を全て読み終えた後の結論になりそうな予感……。