不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

吸血鬼/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第6巻 魔術師 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第6巻 魔術師 (光文社文庫)

 テンションの高さや話の運びに『魔術師』ほどの一貫性があるわけではないが、他作に比べれば十分まとまった作品。完成度の高さとしては、乱歩の通俗ものとしては恐らく例外的な水準に達している。また『魔術師』ほどの完成度の高さに欠ける分、見世物的な要素は多彩で、まさに乱歩らしさがてんこ盛り、捨て難い魅力を放っている。
 個人的には『魔術師』をとりたいが、『吸血鬼』もなかなか侮りがたい作品であり、乱歩ファンは必読であろうと思う。なお、小林少年の初登場作品。