海のオベリスト/C・デイリー・キング
- 作者: C.デイリーキング,C.Daly King,横山啓明
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本
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『海のオベリスト』だが、手掛かり索引がいい味を出している。『空のオベリスト』ほど目覚しくないが、伏線の妙を後追いで味わうことが出来るのは、私のような怠惰な読者には楽でいい。いい味といえば、この話が航海中の出来事であるのもプラスに作用している。巨大ではあるが舞台は限定され、場の空気が一貫して緊張感が保たれ、同時に上流階級臭やラブロマンスが挟まれるのもいい感じである。総じて傑作ではないが、駄々をこねない限り、黄金期本格の面白さは味わえる逸品である。
先週オフで会った知り合いに「最高の本格と最高のSFでは、後者の方がオーラを放っている」などと暴論を吐いてしまったのだが、『海のオベリスト』辺りを読んでいると、「古典における、いかにもビンテージというあの味わいは、SFよりも本格の方が良く出ている」などとも思う。やはりどちらのジャンルも素晴らしいということだろう。もちろんその前提として、小説というものの素晴らしさはあるけれど。