不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

赤い霧/ポール・アルテ

赤い霧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

赤い霧 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 恋愛小説としてはなかなか面白い。しかし本格としてはどうなんだろう。トリックがしょぼいのはこの手の話の宿命だから不問に付そう。しかし何じゃこの真相のショボサは。俺の考えたラストは殊能将之と同じで、「うおこれは傑作だ」と思ったところまで一緒だったのだが、かなり手前で着地されたような気まずさがある。決して駄作ではないので誤解なきように。先述のように、恋愛小説として捉えれば非常に興味深い作品です。でも、人気作家だから大量得票するんだろうなあ、と思うとどうしても萎えてしまう。作家にも作品にも無関係な理由なので、小説の神には大変申し訳ないのだが……。
 あと、解説も、もう少しセルフアピールを抑えればいいのにと思った。ぶっちゃけ……いややめておこう。『紅楼夢の殺人』は傑作なので、それを強調しておきます。少なくとも今年は。