不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京交響楽団

  1. ベートーヴェン交響曲第8番
  2. リスト:ピアノ協奏曲第1番
  3. (アンコール)コンチェルトのフィナーレ再演
  4. R.シュトラウス交響詩英雄の生涯
  5. (アンコール)ヨゼフ・シュトラウス:ワルツ《うわごと》

ピアノ独奏ボリス・ベレゾフスキー、指揮はパーヴォ・ヤルヴィ

 オケの鳴りが素晴らしい! 非常に落ち着いた音色による、充実した鳴りっぷりで感動しますた。しかもパートバランスが見通しよく、響きが混濁しないのにもいたく感心。解釈上も、刹那的な盛り上げや興奮はなく、奇を衒うような表情付けもなし。実に大人な演奏であったと思う。この日のハイライトは、《英雄の生涯》ラスト数分でしょうな。こういうサウンドが本当に似合う部分なもので。会場も、狂熱的なブラボーはなく、演奏に相応しい落ち着いた、しかし長い拍手をもって演奏者を讃えていた。なお、ベートーヴェンも大きな編成でやっていたのが興味深かった。この世代の指揮者としては珍しいですな。アンコールも非常に素晴らしかった。ていうか《うわごと》かよ! 驚愕したのは、件の序奏にまるでシベリウスのような冷たい空気が感じられたこと。一瞬何の曲かわからなかった。この曲だけに限らず、絶対に暑苦しくならないのも良い。パーヴォ・ヤルヴィ、実にいい感じの指揮者ですね。拍手されている際、オーケストラを立たせようとするヤルヴィの指示にオケが従わない場面も二度あり、オーケストラもこの指揮者を高く評価しているのが伺えた。パーヴォ・ヤルヴィが来年から本格的にN響に略奪されることを知っている身としては、《また来て下さい!》という懇願が込められているように思われ、何だかいたたまれなかったのだが……。パーヴォはこのままNHKにしか客演しなくなるのだろうか? そうなった時には、東京交響楽団クリスティアン・ヤルヴィを招聘すれば楽しいことになるだろう。いっそのこと時を同じくして日本フィルがネーメ・ヤルヴィを招いて、ヤルヴィ家の面々in Tokyoとかやりませんか。不可能ではないはず。でもNHK交響楽団を除いて、日本のオケにはそんな金ありませんかそうですか。

 ベレゾフスキーは所謂ヴィルトゥオーゾ。うまいのはデフォルトだが、その派手な弾きっぷりと、地味な充実を体現するオケとの対比が面白かった。