不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

UBSヴァルビエ・フェスティバル・オーケストラ

 曲目は、モーツァルト:《フィガロの結婚》序曲、ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、ムソルグスキー組曲展覧会の絵》(ラヴェル編曲)。ヴァイオリン独奏はマキシム・ヴェンゲーロフ、指揮はシャルル・デュトワ。ちなみに、本来はムソルグスキーの前にドビュッシー:《牧神の午後への前奏曲》が挟まれていたが、カットされた旨会場に掲示されていた。残念。

 19歳〜29歳の若手による臨時編成オケで、世界各地(36ヶ国とかそんな感じだった)から集まってきているらしい。これがうまい! ノリもいい! 読売日本交響楽団の生真面目な奏楽に比べ、何と精彩があることか。ここら辺は、外来オケと日本のオケの、未だ埋めきれない溝かもしれない。まあ向こうもツアーって事で張り切っている面がある(しかもヨーロッパ→アジアツアーの最終日だったそうだ)し、そもそもこのオケ常設じゃないんで元から気分はハレだと思われる。さらに、曲目自体もこちらの方が《華》があるのでただでさえ聴き栄えする。単純比較は問題かもしれない。
 しかしデュトワの指揮って洗練されてるなあ。同じ《展覧会の絵》でも、5月のゲルギエフはえらい違いで、あくまでスマートに決めてくる。響きが混濁しなくて、楽曲の展望含めあくまでクリア。妙に溜め作るより、こっちの方が200倍くらい素晴らしいと思いますよ。ロッテルダム・フィルと違って、木管金管に潤いがあって良かったし。そしてアンコールは、なんとラヴェル:《ラ・ヴァルス》!! この曲が聴けるとは思ってもみなかった。始まった瞬間、俺の中でモナーたち大暴れ。大迫力&クリアなサウンドは《展覧会の絵》と共通だが、ワルツのリズムに強調を入れて珍しく芝居がかっていたのが、アンコールっぽくて感じが良かった。
 ヴェンゲーロフは最強。参りました。あんた凄えよ。序盤のミスを除き、完璧な技術をベースに迫力の演奏を繰り広げていた。なお、彼のソロ・アンコールは、彼自身の語りによる寸劇。英語を解せぬアホのため、バカテクであることくらいしか理解できず。やっぱ英語勉強しないと駄目か……。