ネフィリム/小林泰三
- 作者: 小林泰三,藤原ヨウコウ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/08/31
- メディア: 単行本
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東野圭吾や西澤保彦も、嫌味に満ちた作品を書いているが、彼らの場合、何かを切実に信じたがっていたり、皮肉の出発点が「現実と理想のギャップ」から来る失望だったりする。その眼差しは皮相ではなく、真剣そのものなのだ。要するに《青い》というわけであろう。もちろん悪いことではなく、人としてはそちらの方が幸せだろうと思う。
一方、バークリーら四名は、ほとんど常にニヤニヤしたまま、悲劇だろうが喜劇だろうが、その滑稽さを物語の主眼にすえる。そして、読解力や知識に欠ける読者を馬鹿にするネタを、随所に埋め込んで楽しむのだ。まさに曲者。
小林泰三も、皮肉だけで小説を書ける素晴らしい作家である。しかし今回は、何やら普通の吸血鬼小説。各所のグロ描写に片鱗を見せるが、これも彼のベスト・フォームではない。ネタの詰め込みも珍しく弱い。『AΩ』みたいなのを期待していたのだが。
続編がありそうなので、変なことはそちらでやるつもりなのだろうか。それとも、私が何か致命的な読み落としをやったのだろうか。相手は小林泰三であり、決して安心できないのである。