レオナルドの沈黙／飛鳥部勝則

レオナルドの沈黙 (創元クライム・クラブ)

　交霊術、芸術論議など、この人らしいといえばらしい道具が使われる、端正な本格ミステリ。非常にシンプルなカバーにも似て、本筋はけっこう綺麗にまとまっていて好ましい。キャラが壊れ気味だし、ぎくしゃくしつつも味のある会話など、この人の特徴である《微妙に異形》な情感は非常に素晴らしく、お勧めしてしまいそうになる。
　ネタが色々詰め込まれているのも嬉しいところだが、難を言えば、それら複数のネタが複雑に絡み合うところまで行かないのは残念。一つ、非常にわかりやすいネタがあり、そこを端緒に、予め全てに気付かれかねない。ただまあこういうシンプルな本格も嫌いじゃないので、私は楽しめました。