不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ゴールデン・サマー/D・ネイサン

ゴールデン・サマー

ゴールデン・サマー

 眼鏡をかけたひ弱な少年ダニーの、ひと夏の生活を描いた作品である。長編ではあるが骨格となる出来事がなく、細かいエピソードを重ねてゆく手法を取る。とにもかくにもカネを重視するダニーの行動は面白く、ピンチ(無論大したことのないガキのそれではあるが)を切り抜けてゆくのも胸がすく。とはいえ単にそれだけであるのは否定しがたい。個人的に、このような幼年期を過ごしていないのも大きいかも。世代も全く違うので、幕間に挟まれる当時の社会記述も、「ふうん、そうなんだ」にとどまる。つまらなくはないが、この作品をもってダニエル・ネイサンのファンになる人が出て来るとはまったく思えない。

 こういうこと、エラリイ・クイーンにはあまり言いたくないんだけど……。