湖畔亭事件／江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚 (光文社文庫)

　こちらは初期らしく、本格っぽく決めてくる。伏線も回収するし、真相には納得感が見て取れる。とはいえ、長編（というか中篇）ということで、物語上ある程度の肉付けがなされており、短編との差別化が図られている。主人公のレンズへの嗜好が、たいへん印象的である。短編なら、こういう部分はなかったと思う。乱歩の筆が一番乗っているのも、この部分だし。推理作家としてそれはどうかと思うが、この隙の多さも乱歩の魅力と考えよう。

　「空気男」にも少しだけ。
　未完のミステリなぞ無意味だとは思うが、話の前提となる挿話を積み重ねるという早い段階で連載が止まっているので、まあまだ読める。質はともかく、完成していれば「二銭銅貨」の長編版となっていたと思われるため、少々残念である。