不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

改訂・受験殺人事件/辻真先

改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫)

改訂・受験殺人事件 (創元推理文庫)

 《ポテト&スーパー》第三弾。
 一見ユーモアに満ちた作風だが、青春時代の痛切な苦悩を余すところなく描ききる。題名にあるとおり、受験が背景として機能し、高校生たちの「鋳型にはめようとしやがって」「受験戦争はおかしい」的なノリが苦味を添える。また、それとは性質が別だが、オチた後は相変わらず光さえ射さない。救いなきラストに乾杯。

 で、ミステリ的な構造だが、辻真先にしては凝っていない。その分、青春小説としての要素が前面に出ている。ポテト&スーパーの活躍が、もっとも端的に記された作品なのではないか。個人的には、ミステリ上の仕掛けをもっと艶やかに施してもらいたかった気もしますが、まあこういうのもありかと。

 蛇足だが、あの後付って実際はあり得ないと思うんだよね。特例でああなった、と解釈すればいいんでしょうが、それにしてもなあ。商取引上、いささか問題ありな気がします。