算盤が恋を語る時/江戸川乱歩
- 作者: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/07/14
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (86件) を見る
今作はユーモラスにして軽妙な色調で彩られており、切なさや哀しさは薄い。よって誰にでも楽しめよう。しかしその分面白みも希釈されており、私の場合、経理に算盤を使用する古代性を興味深く感じる程度だった。ただし、乱歩は深刻な話を書かなかった、いや書けなかった人だと解釈した場合、案外このような作品にこそ素顔の乱歩が佇むのかもしれない。決して疎かにしてはならない短編である。このように擁護せねばならない時点で、問題ではあるのだが。