不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

日記帳/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

 内気な男の恋の物語。
 本来ならば、これだけで私の胃はねじ切れそうになる。しかし「日記帳」は私にストレスを与えなかった。普通に読み通せたのだ。理由をつらつら考えるに、男が身体的に病弱という点も大きかろう。病弱であるが故、彼はその意思に関わらず動けない。他に選択肢がないため、彼は内気な戦法を使用する。精神を病んだ私とは状況が全く違う。よって(このように取り乱しはするものの)精神攻撃を食らってダメージが尾を引く、などということはない。
 しかし、最大の相違が両想いであることに目を逸らしたままでいられるわけもなく、結局のところ私は鬱の海に沈むこととなる。現在進行形の恋愛感情はないため、浮上する余裕はまだ辛うじてあるのだが……。