不壊の槍は折られましたが、何か?

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赤い部屋/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)

 ある男が赤い部屋にて、無関係な者をそれとなく殺すことに心血を注いできたと告白する物語。例によって最大の魅力は、一人称の語り口に人間性や人生観が滲み出る点だ。幕切れも乱歩らしい。自身は批判的だが、こういう夢から醒めるような味わいは諸行無常が感じられ、嫌いじゃない。乱歩という作家、結局は色々とわかっていたのだろう。