不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

帝王の殻/神林長平

帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)

帝王の殻 (ハヤカワ文庫JA)

 『あなたの魂に安らぎあれ』に続く、シリーズ第二弾。作風の方向性がより明確に打ち出され、画然としながらも曖昧模糊とした独特な情感がさらに強化されている。人間の精神とは一体何か、そしてその精神は機械にも宿るのかといった主題が、ハードSFやエディプス・コンプレックスとも絡みつつ重層的に語られ、読者は強い手ごたえを感じつつ読書を進めることになるだろう。

 傑作であり、広くお薦めしたい。なお『あなたの魂に安らぎあれ』を読んでおいた方がいいと思う。『サマー・アポカリプス』『薔薇の女』『オイディプス症候群』を『バイバイ、エンジェル』より先には読めないのと同じ理由である。