不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ラストホープ/浅暮三文

ラストホープ (創元推理文庫)

ラストホープ (創元推理文庫)

 元・宝石泥棒のコンビがいつの間にか巻き込まれる、一億円を巡る騒動。

 ピカレスク小説、と大上段に構えられると何か違う気がする。私としては、釣りの場面やFAXの場面が妙に多かったり(確かに必然性はあるのだが、何か釣りやFAXに執着したいからこそプロットを後作りしたような、変な感覚を覚えた。まあ気のせいだが)、登場人物たちの騙しの手口が妙に空想的だったり、その癖文章が妙にもさもさしたりといった、通常のコンゲームピカレスクとずれた部分に着目したい。
 正直傑作ともお気に入りとも言いかねるが、確かにこれは浅暮三文にしか書けない話だと思う。十年後の伊坂幸太郎ならあるいは、と思うが。