不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ジャニーネ・ヤンセン&ベルギー国立管弦楽団

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
シベリウス交響曲第2番
指揮はミッコ・フランク(1979〜!)。

 ヴァイオリニストのヤンセンは身長が結構あった。松嶋菜々子くらいはあるんじゃないか? で、その大きな体をフルに使ってかどうかは知らんが、非常に鳴りも良く勢いのある演奏で良かった。すすり泣くようなヴィヴラートも、曲が曲なので、この方向性で可。非常に可。弱音に緊張感があるのもいいですね。今日の客層、正直良かったとは言いかねるが、それでも会場全体で耳を澄ます瞬間が頻発していた。彼女のアンコールは、バッハの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番〜プレリュード》。バロックだ古典だと頓着せず、チャイコフスキーでのスタンスそのままの生々しい演奏だったが、アンコールなんでこれもまた良し。

 後半のシベリウスは、話題のミッコ・フランクの手腕を確認できて得るところ大だった。
 結論から述べればこれは好みのタイプの演奏だった。オケの鳴りが非常に良かったし、バランス的にも、各楽器の響きがブレンドされており、しかも目立つべき楽器は目立っていて最高。楽曲の構成面でも、全体的には爽快なテンポとスムーズな流れが曲本来の魅力を引き立てていた。所々、ガクッとテンポが落ちたりする部分があったが、自然に行われていたので変な感じはせず。つまりとても見通しの良い演奏だったというわけだ。リズムが均され気味だったのが残念といえば残念。まあこの曲ではダメージ僅少なのだが、アンコールのプロコフィエフ:《騎士の踊り》from《ロミオとジュリエット》ではこれはちょっとした不満となった。
 オーケストラ自体も非常に上手かった。ロッテルダム・フィルなんぞとはえらい違いである。満足して本当に家路につけたのがありがたい。都会から離れようとするのは、ただでさえ鬱の極みなので、この上不要なマイナス感情を抱いて帰るのは御免蒙る。