不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

スタニスラフ・ブーニン(ピアノ)

J.S.バッハフランス組曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番
シューマン:花の曲
ショパン:《24の前奏曲》より12曲&《舟歌

 非常に立派なプレイだった。技術的にも非常にまとも、緩急は色々な面で付与していたが、バランスはうまく考えられていたと思う。しかしそれだけだった気がしてならない。大幅なダイナミズム(音量的にもテンポ・リズム上も)を付加したバッハとベートーヴェンには特に大きな疑問符を投げかけたい。後者はただでさえ錯綜した曲だし、前者はバロックなので感情をぶちまける手法は余程のことがない限り首肯しがたい。後半も、迫力等の演奏効果がこちらの感心・好奇心・感動に必ずしも結びつかない恨みがあった。弱音部が「単に音が小さい」だけなのは致命的だったと言えるだろう。
 アンコールのショパンやバッハでも同様だった。

 というわけで、言い知れぬ脱力感を覚えながら帰路に就いた。