不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

盗作・高校殺人事件/辻真先

盗作・高校殺人事件 (創元推理文庫)

盗作・高校殺人事件 (創元推理文庫)

 この題名はさすがに危険。しかし作品自体はいつもの通り、非常にトリッキーな仕掛けを施した逸品となっている。相変わらず後味が悪いのはさすがで、普通はシリーズ続かないよ、という感じで終わってしまう。つまり辻真先の面目躍如たる作品というわけだ。
 21世紀に読んでいる以上、文章の節々に時代を感じるのは仕方ない。「こんな高校生いるわけない」と思うのも仕方ない。ミステリファンとしては、辻真先の仕掛けたトリックをじっくり味わうべきであろう。手が込んでいる割に理解しやすいのは、文章・プロットその他諸々の整理がうまい作者に帰せられるべき功績である。ファンは必読だが、そもそもファンなら絶対読んでいるはずの作品なわけで、かなり後発組の私が言うべきことは極めて少ない。