不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

迷宮の暗殺者/D・アンブローズ

迷宮の暗殺者 (ヴィレッジブックス)

迷宮の暗殺者 (ヴィレッジブックス)

 一部で話題のサスペンス。

 凄腕の暗殺者。夫の死にまつわる疑惑を追う医師。これら二つの機軸が交わる第二部において、唐突に、意外というか無茶な事実が明かされる。この瞬間、『迷宮の暗殺者』はバカミスとして燦然と輝き始めるわけで、私は失笑してしまった。
 とはいえ、無謀なことをしてはいるものの、作者は話をそのまま放り出していない。続く第三部でその意外な事実に基づくストーリーを更に描き込んで、世界観を確立してしまうのである。そこが素晴らしい。とはいえそこでせっかく確立した世界も、しばらくすると棚上げされる。ここはちょっと残念だ。
 ラストで一瞬、かの異様な世界観がちらりと垣間見えるのは素晴らしいけれど。

 というわけで、バカミス好きにはお薦めしたい。中盤で楽しんでください。