不壊の槍は折られましたが、何か?

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妖虫/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第8巻 目羅博士の不思議な犯罪 (光文社文庫)

 蠍が不気味さを醸す、と言えたら良いのだが、作中で顔を出す蠍は残念ながら全て死骸でしかなく、動いてると思ったら巨大な着ぐるみだったりしてなかなかうまく行かない。しかしこの滑稽さも含めて乱歩の通俗ものの特徴がよく出ており、良くも悪くもサンプルとしては好適な作品である。光文社文庫における全集第8巻の末尾に置くには、色々とバランスが良い。