大聖堂は大騒ぎ/E・クリスピン
- 作者: エドマンド・クリスピン,滝口達也
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2004/05/26
- メディア: 単行本
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『大聖堂は大騒ぎ』自体は残念ながら傑作クラスとは言いかねる。ファースの味付けも、この作家ならもっと上を目指せるはずだ。それでも各所でニヤリとさせられるのはさすがで、悪意なきアイロニーの数々は非常に素晴らしい。世相を反映したシリアスな骨子を持つにも関わらず、何処となくお馬鹿な味わいがあるのもこの作家らしい。個人的には、フェンがアプルビイへの対抗心を燃やす数行が特に楽しかった。もちろん、こんな所で喜んでいては惰弱の謗りを免れない。読み手としてのボトムラインは遥か上方。申し訳ない。
ミステリとしての出来は……まあ普通なんじゃないでしょうか。軽いが悪くないネタだと思う。長編向きかと言われると首をひねるしかないが、物語面でカバーしているから、問題視するほどではないだろう。
というわけで、ファンにはお薦めしたい一冊。クリスピン入門には他にもっと適当なのがあります。