名探偵 木更津悠也/麻耶雄嵩
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/05/20
- メディア: 新書
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話を麻耶雄嵩に戻そう。
本作最大のテーマは〈ホームズとワトソン〉である。これに比べれば他の要素など彩りに過ぎない。
『翼ある闇』を読んだ方にとって、木更津悠也を単純に名探偵と片付けられないことは自明である。助手役の香月実朝も、ワトソン役として単純に処理できない。今回、麻耶雄嵩はその点を更に掘り下げている印象を受ける。しかし同時に、(小説的な)肝心要の部分を曖昧に放置する作風も健在だ。以下ネタバレ。
木更津はどこまで気付いているのか? 彼は本当に香月以下の推理力しか持たないのか? ひょっとして、全部わかった上で香月に付き合っているんじゃないのか? あるいは、能力とはいったん無関係に、資格的な部分のみからホームズを自覚的に演じ、香月にワトソン役を演じさせているのか?これ以外にも、色々な意見があろう。多様な解釈を誘発しつつ、この一冊は読み終えられてしまう。「名探偵について考えさせられました」などと言うとアホの極みだが、本格ファンたるもの、やはりこの大テーマには考えさせらるのである。
ずるいのは、これも一種のネタなのだから、WEBなど公開の場で大っぴらに意見を公開したり、議論したりできない点にある。先述した〈食い足りなさを指摘する〉向きのサイトも、恐らくはこの作品を読んで名探偵/助手の関係性に思うところ色々あるはずだが、この制約のためどの程度考えておられるのかさっぱりわからん。もちろん、投げかけられたテーマを思いっきりスルーしている人もいるだろうが、さすがに少数派だと信じたい。