不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

シェルター 終幕の殺人/三津田信三

シェルター 終末の殺人 (ミステリ・フロンティア)

シェルター 終末の殺人 (ミステリ・フロンティア)

 ある富豪が、《探偵スルース》よろしく庭園に迷路を作った。その真ん中には、核シェルターへの入り口が置かれている。可及的速やかに入らねばならない設備の入り口の設置場所としては意味不明だが、まあとにもかくにも名物化したその庭に、推理作家の三津田信三含め訪問者が複数やってくる。そしてシェルターの扉を前に雑談している時に……東京の中心部に光球が現れる!
 その後、外部と連絡もとれないシェルター内で殺人事件が発生する。しかも密室。最悪の場合他の人類が全滅したかもしれない極限状況にあって、何を苦しんで殺人など起こすのか?

 雰囲気を盛り上げるのがうまい作家だと思う。クローズドサークルもの特有のサスペンスがうまく機能しており、ホラー系の雑学を中心に、会話が割と脱線するにも拘らず、緊張感が一向に途切れないのは良い。ラストの雰囲気もなかなかに決まっている。ただし本格ミステリとして決まったかどうかは、議論百出だと思われる。私は楽しめたが、他の人にもその通りかはまるで保証できない。
 というわけで、少々読者を選ぶかもしれないが、駄作では決してない。間口が狭くないミステリファンにはお薦めできる。