不壊の槍は折られましたが、何か?

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透明怪人/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第16巻 透明怪人 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第16巻 透明怪人 (光文社文庫)

 少年探偵団ものは、毎度の事ながらトリック等が子供騙しであり、怪人をわざわざ持ち出す利点も非常に薄弱。だが、超常的な怪事の演出という話のテーマは絞られており、透明怪人を演出する二十面相の意欲はひしひしと伝わってくる。『妖怪博士』『虎の牙』では、二十面相の手口があれもこれもになって、何をどうやって演出したいのか、軸がぶれ気味であった。『青銅の魔人』にもまだその気が残っていた。しかし『透明怪人』では作者も腰を据え、騒動の一部始終を非常に活き活きと描いており、懐かしさもあってたいへん楽しめる。
 というわけで、二十面相のコスチュームが懐かしい人には大いに推奨できる作品。