罪の段階/R・N・パタースン
- 作者: リチャード・ノースパタースン,Richard North Patterson,東江一紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/10
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濃縮度の高いリーガル・サスペンスを予想していたのだが、展開されるのは、夫婦/親子/家族とは、などという家庭的な主題である。しかも作者はこれに集中し、他の要素には脇目も振らぬ状態に近い。問題はこの主要主題の掘り下げが浅いことである。いや、正確に言えば、調理方法があまりにも月並なのだ。テンポも微妙に弛緩している。
たとえば同様のテーマでも、他により重要な主題があり、それに更なる陰影をつけようとの意図で使用されるならば、法月綸太郎のように少々踏み込みが浅くても、特に抵抗なく読める。退屈もしなくて良い。或いは、主要主題なのだがはっきりとは姿を現さない、といったものでも良い(これにはランズデールの『ボトムズ』などが適用できると思う)。
パタースンは、家族というテーマに正面から切り込む。まあそれは良い。問題は切り込みの角度であり強度だ。要は慧眼が感じられず、ありがちな素材をありがちに料理して、読者の感動を誘おうとしているのがミエミエだ。真相自体が月並なのは譲っても、その真相を知ったからどう感じた、という点が完全にスルーされており、非常に気に食わない。バスケットの試合シーンに全てを託したつもりかもしれないが、あそこから何をどう読み取れというのか。自分で選択した主題くらいは、自分で処理してください。
とはいえ、この一作だけで作家単位の評価をするのもどうかと思うので、次も読んでみることにしよう。ええ、暇な時に。