針/浅暮三文
- 作者: 浅暮三文
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/01
- メディア: 単行本
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早川のJコレクションに入っていることで独特な存在感を得ている。触覚が異様に鋭敏になってしまった男が、《触って最も気持ちいいもの》を求めてプレイがエスカレートしてゆく物語。SF臭は、そうなってしまった原因に認められる。
異色作という便利な言葉を使用したくなる一冊で、潔癖症の人にはお薦めできない。ただエロシーンに突入すると、触覚の異常性が途端に文章から感じ取れなくなり、単に「もの凄く綿密・執拗に行為を描写している」だけになるのは残念。正確に言うと、触覚を際立たせようとはしているのだが、元々エロシーンというのは、直接的な表現を避けるべく荘重・大袈裟な修辞が駆使されがちということもあって、それら「普通の性行為描写」との差がほとんどないということだ。実感そのものなのか、比喩なのかの差はあるけれど、それを書かれた文章から差別することは、極めて難しいと言わざるを得ない。多分、触覚→女体との接触 に話をつなげたこと自体が失点なのだろう。
蛇足だが、ハードコア過ぎて実用に供せない。文章も格調高いし。まあだからこそ、日記のネタとして晒せると判断したわけだが。