最期の声/P・ラヴゼイ
- 作者: ピーター・ラヴゼイ,山本やよい
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/01/11
- メディア: 単行本
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詳述はしないが、邦題つけるならつけるで、もう少し違う頭の使い方をするべきだろう。ネタバレでこそないが、話がかなり進んでから判明する事物を題名にする資格は、作者のみに帰属するはず。
肝心の内容は、いつもながらに手馴れたもの。
物語の適度な湿り気、なかなか意外な真相は、舞台が現代でもラヴゼイは才を発揮できることを証明している。警視の妻が被害者となるため、この作家のもう一つの特徴であるユーモアが後退しているのは残念だが、シリーズの愛好家であればかなりの感情移入が可能なだけに、痛し痒しではあろう。
いずれにせよ、ダイアモンド警視シリーズは現代英国を代表するミステリの一つであるだけに、その転換点となる可能性を秘めた『最期の声』の重要性は、ある程度は強調してもいいはずだ。この作品を駄作だと言える人は極めて少ないだろう、佳品である。ファンは必読。ラヴゼイ初体験には、他にもっと適当なのがあるけれど。