不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

太陽の塔/森見登美彦

太陽の塔

太陽の塔

 彼女という存在が人生の中で皆無だったが、いても稀にしかいない人の中で、頑張ることを放棄して何の努力もしていないにもかかわらず、自分が持てないという当然の帰結を不条理視する妄想力を育み、肥大化しきったプライドを後生大事に抱え込み、クリスマスやバレンタインなど、恋人たちのために認知され機能している日を怨嗟し、あるいは逆に全てを内攻させ鬱モードが炸裂していたりする、生きる価値も権利もない全ての蛆虫に捧げられる、非常に痛い小説である。

 つまり、この作品は私の物語でもあるのだ。

 ハイテンションで内面を描出する作品でこの熱気は読者の境遇を問わず迫ってくるはず。というわけで、彼女がいる人々や女性にもお薦めできる。どこがファンタジーなのかと思っていたら、最後にちょっとだけそうなりました。