不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

接近/古処誠二

接近

接近

 地味で静かな、戦争もの。

 住民を巻き込んだ地上戦の舞台となった、沖縄本島。テーマとなるのはまたもや少年の純情さ、そして戦争の重さ。代わり映えしないのは確かだが、物語はいい意味でコンパクトなまとまりを見せており、すらすら読めるのはこの作家の長所である。

 というわけで結構楽しんだ。年間ベスト等には決して絡まないだろうし、そろそろ別の題材あるいは料理法を求めたいが、『接近』単体はなかなかの作品であり、幅広くお薦めできる。個人的には、古処誠二の今後を暫く追いかけたい。