不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

神は沈黙せず/山本弘

神は沈黙せず

神は沈黙せず

 神とは何か、という問いに対し、近未来SFという意匠でもって答えた長編。

 難解ではなくどちらかと言えば平易な小説で、徹頭徹尾エンタメである。人生観や哲学ではなく、お馬鹿気味のアイデアが最優先される娯楽大作。また、視座の高さ・文章の素晴らしさとかもあまり感じない。更に言えば、肝心のアイデアも決して目新しいものではない。だがテンションが非常に高く、作品世界の全てを語り尽くさんとする強烈な表現意欲は素晴らしい。作品内の整合性も万全で、説得力は抜群である。
 これは凄い。この圧倒的な奔流の前には、主人公が女性に見えないなんて些末事に映る。

 というわけで、私にとっては大傑作であった。オカルトに精通した人には、ちょっとしつこいかもしれんが。