不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

見ざる聞かざる/M・エバーハート

見ざる聞かざる (ハヤカワ・ミステリ 654)

見ざる聞かざる (ハヤカワ・ミステリ 654)

 入手困難だったから有名だったのか、内容が凄いが絶版だったから有名だったのか、
いずれかに見定めることができる、とワクワクしながら読み始めた作品。
その結果……。

 私がこの作品の仕掛けを致命的に読み落としているだけかもしれないが、非常にネガティヴな立場を取るに至る。とにもかくにも主人公が最悪。キャラが薄弱な上に馬鹿。主体性皆無。延々と自分の不幸な境遇を嘆くだけ。これが一人称で延々と続くのである。付き合うのは苦痛でしかなかった。

 何? お前もそうじゃないかって? ……まあ、それを言われると弱いわけですが。近親憎悪とでも考えといてください。

 ミステリ的なネタも、可もなく不可もなしとしか思えず、アピールポイントが見つけられない。そりゃ、M・R・ラインハートほどはご都合主義じゃないですよ。でも如何せん、ラインハートは最悪の事例なわけで……。

 読みやすいのが救いにはなっており、こういうのが気にならない人には薦めたい。