不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

密林/鳥飼否宇

密林 (角川文庫)

密林 (角川文庫)

 ヤンバルの森における、昆虫マニア・米兵・猟師を巻き込んだ宝物捜索小説。暗号とかも出て来るし、俗に〈意外な真相〉と呼ばれるようなネタも使われており、ミステリ・ファンには楽しく読める。

 ただ、ミステリなんて知らねえよ、という読者にも楽しめるかは保証の限りではない。最大の問題は、主人公があまりにもDQNだということ。何かのカリカチュアと言うわけでもなく、単にDQNなのだ。ちょっと不愉快。また、鳶山という〈探偵役〉が終盤にいきなり登場し、それまでの秘境冒険的な感興を、「名探偵登場!!」とばかり一掃してしまうのも、個人的には好きだが、一般的にはどうかと思われる。ここで話の性格変わっちゃうんだよなあ。本格なんて本格ヲタ以外には何ほどの意味も持たないわけで……。ではと、本格ミステリとして評価する場合、今度はネタとかが弱過ぎる。要するに、ちょっと中途半端な作品というわけ。

 正直なところ、このやる気なさげな半端さは嫌いではないものの、アピールできる層はとても狭いと思われる。