不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ミッシャ・マイスキー&ラトヴィア国立響

 前半はドヴォルザークの森の静けさ&チェロ協奏曲。後半はチャイコフスキー交響曲第5番。
テリエ・ミケルセンの指揮で。

 東京か大都市圏にさえ住んでいれば、間違いなく無視するプログラム。私も落ちぶれたものだ。未知のオケを聴けたので、まあ良しとしよう……と信じ込めたら、どんなに楽なことか。

 チェロのマイスキーは熱演。速いテンポと高いテンションによる独壇場。個人的には、この曲はもっと丹念に、じっくり弾いてくれる方が好みだが、生であればこういう演奏も悪くなく、演奏者に圧倒される思い。アンコールで、バッハの無伴奏組曲第一番《プレリュード》まで聴けて、ちょっと嬉しい。無論、精神衛生上の観点から、モダン楽器によるバッハであったことは深く考えないようにする。

 後半のチャイコフスキーはいささか問題あり。最初の一音から最後の和音まで、各楽器は最上のバランスで鳴らされており、全曲はゆるやかな稜線を描くように、なめらかに、かつ美麗に演奏された。問題は、単にそれだけだったということ。この曲は途中にもっと色々あるはずで、なぜに「並べて世は事もなし」的な、のほほんとした雰囲気で一貫するのか。電波な表現で申し訳ないが、この曲はもっと「闇」や「凹凸」が必要だと思う。《運命のモチーフ》が出てくる時さえ、空気が全然重くならないし……。先述のように、オケはかなり「うまい」と言える。だから会場ではブラボーが出た。しかし、私は大いに不満。

 こういうスタイルには、舞曲が良く似合うんじゃないかなぁ。と思っていたら、事実第三楽章は好演だったし、自分でもわかっているのか、アンコールが二曲とも舞曲系。総合的には満足して会場を後にできたが、東京にいさえすれば行かなかった演奏会ではあり、内容自体、ある意味予想通りだったこともあって、演奏そのものとは関係ないところで、無性に悲しくなった。

 なお、今日は聴衆に一部残念な方がおられた。氏ね。