不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

カール・ライスター(クラリネット)

 クラリネットのリサイタルに行ったのは初めてであった。プログラムは微妙にマイナーで、前半がダンツィとメンデルスゾーンソナタ、後半がウェーバーヴェルディのオペラからメロディーを取って、当時の名手たちがクラリネット用に編曲した《幻想曲》関連を三曲。合間に、伴奏者の土居和子による、モーツァルトシューマンのピアノ独奏用小品を挟むという形。ちなみにアンコールはレーガーの《ロマンス》でした。

 この中で、ピアノ独奏を除けば、聴いたことがあったのはメンデルスゾーンソナタだけ。不勉強に恥じ入り猛省すると共に、だからこそ楽しみでもあったコンサートだ。

 知らない曲ばかりだったので、相対的にどうだこうだは言えないのだが、後半には至極満足した演奏会だった。超絶技巧だったかは微妙で、ぶっちゃけもう全盛期は過ぎてる(現在66歳)と思ったが、それでもまだまだ非常にうまく、聴かせどころを外さないのはさすがというか達者。暗い音色で渋く迫る演奏は、曲の華々しさとちと合っていない気もするが、ここまで見事に、そして端正に自分流を押し通されると、これはこれで素晴らしいと評価せざるを得ない。

 なお、前半はなぜかクラリネットの鳴りが悪く、ライスターも盛んに首をかしげていたわけだが、舞台上で管の中にハンカチを棒で突っ込みゴシゴシ拭いてから(初めて見た。なるほどこうするのね)、見違えるほど音が良くなったのは、非常に興味深かった。会場の空気もあれで変わったしね。ただ、ピアノのソロはなかった方が良かったと思いますた。平坂過ぎ。伴奏者としては無難だったけどね……。