目を擦る女/小林泰三
- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/09
- メディア: 文庫
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「目を擦る女」
隣に住んでいるおサイコな女とのサスペンスかと思っていたが……。などとはさすがに思わないけれど(この作者との付き合いは長い)、予想通りの展開とはいえ、この不気味でグロテスクな情景は素晴らしい。
「超限探偵�堯�
一見ミステリだが、無論そこを飛び越えてくる話。とはいえ、この作者にしてはアイロニーが薄味。もっと濃いのを希望。
「脳食い」
タイトルそのまんま。こういう話であっても妙に滑稽なのは、個人的には非常に好ましい。
「空からの風が止む時」
ここで唐突にハードSF。しかも非常に綺麗な物語で、希望に満ちてさえいる。しかしこの手の作品もまた、『海を見る人』で示されたように、作者の得意とするところ。オチにのみ、この作者の邪悪さが認められる。
「刻印」
すげえバカ話。予想は「悪い意味」以外のあらゆる意味で裏切られた。
「未公開実験」
会話によって進む、タイムスリップの論理を巡る物語。コントのような雰囲気を湛えつつ、しかしどこか不気味に進む物語は、「ああ、やっぱり」という結末を迎えるが、途中の会話の楽しさといったらない。
「予め決定されている明日」
算盤を使って何をしているんだと思ったら……。ラストも怖い。ただし、私は意味を読み取れていないかもしれない。どうしてこうなったのか、俺は理解できてないっす。
というわけで、佐藤哲也の『異国伝』とはまた違った意味で、「法螺話でしかない物語」を楽しませてくれる一冊。ただし、作者の屈折度合いは佐藤哲也の遥か上を行く。小林泰三という作家、本当に個性的だと思う。当然、ファンは必読である。