林真紅郎と五つの謎／乾くるみ

林真紅郎と五つの謎 (カッパ・ノベルス)

　乾くるみはデビュー作があれなんで、際物の印象がある。しかしこの短編集はなかなかどうしてマトモ。「シンクロ」を合言葉に真相をひらめく林真紅郎はどうかと思うが、話の内容は、ツイストを加えながらも常態の本格に留まる。変に人間ドラマを加えず、本格原理主義に徹しているため、あまり異様さが際立たないという事情もある。だがやはりそもそもネタ自体が、本格の範囲内では普通であることが一番大きいのである。

　とは言え、単にそれだけ、という印象も拭えない。短編だからと軽く受け流しても、特に問題あるまい。