不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

七度狐/大倉崇裕

七度狐 (創元クライム・クラブ)

七度狐 (創元クライム・クラブ)

 世襲でその名が引き継がれる、落語界のビッグ・ネーム、春華亭古秋。当代の古秋は引退を決め、三人の息子から次代の古秋を選び出すべく、一門会で芸を競わせることにした。会場に選ばれたのは、寂れきったド田舎の温泉宿。この会を見届けるようにと編集長から言われた緑は、単身この地へ取材に赴く……。

 クローズドサークル、見立て殺人、お家騒動と、三拍子そろった本格ミステリ。その魅力については、霞流一が解説で語り尽くしており、私ごとき者が付言することは何もない。ただ一言、なかなかの傑作、と言っておこう。犯人特定にいたるロジックが甘いのは惜しまれるが、もはや私はそういう観点でこの作品を語りたくない。だって、それが主眼じゃないもん。