ヴードゥー・キャデラック/F・ウィラード
- 作者: フレッド・ウィラード,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/07
- メディア: 文庫
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戸梶圭太推薦、という時点で物語の傾向は予想できる。で、その予想は裏切られなかった。とにかく安い事件である。登場人物も皆安いし。ただし誤解してはならないのは、作者自身の創作能力は断じて安くないということ。彼はチャプターをかなり短く区切ることで、非常に小気味良いストーリー展開を実現した。問題は、そのこと自体ではなく、その中で何が実現されているかだが、ここで作者はいい仕事をしている。登場人物の性格やら情感やらが、さりげない一言や一挙において、一瞬一瞬に印象的にきらめいているのだ。軽い読み物という、多弁はどうしても弄せない制約の中、作者は適切な人物・場面描写をやってのける。センスの良い作家にしかできない芸当である。
というわけで、かなり楽しめた。ただ、割と早く飽きる予感もひしひしとする。目新しいネタを発掘し続ければ、面白い作家だと思う。